監視国家アメリカと内部告発の弾圧 デモクラシー・ナウ!動画字幕 [2012.03.21] 国家安全保障局(NSA)が莫大な予算をかけて密かに進める壮大な国民監視システム 違法な自国民の監視を憂い、内部告発した人々をスパイ容疑で弾圧するオバマの政府 ネルミーン・シェイフ(NS): こんにちわ ネルミーン・シェイフです ワイヤード誌によれば NSA(国家安全保障局)は 巨大な監視センターを ユタ州に築いています 秘密の監視プログラム 「ステラウインド」の一環です バンフォード記者によれば NSAは国中に聴音所を置き 膨大なメールや電話を 国の内外を問わず分析しています ユタ州の監視センターは 容量底なしのデータ集積所です 私信メールや携帯電話の内容 グーグル検索などの個人履歴 駐車場利用や旅行プラン 書籍購入なども記録します エイミー・グッドマン(AG): NSA は想像を絶する処理能力の 超高速電算機も開発し 情報のパターンや暗号を解析します 記事によれば 「秘密監視計画はブッシュ政権の 全情報認知計画を実現した」 プライバシー侵害の恐れから 議会が却下した計画です ジェイムズ・バンフォード氏が ロンドンから話します ワイアード誌の記事は 「NSAは巨大監視センターを建設中」 バンフォード氏は30年にわたり 国家安全保障局を追究し 1982年の本でNSAの活動をあばき 裁判にかけられそうになりました 最新作は『シャドウ・ファクトリー』  NSA3部作の完結編です バンフォードさん とても印象的な記事ですね 導入部分を読み上げて いただけますか? ジェイムズ・ハンフォード(JB): いいですよ 砂ぼこり舞う小さな町は 春風に霞が混じり 灰緑色の茂みが サラサラと風になびく ブラフデールは ユタ州の山あいの町だ 東にはワサッチ山脈 西にはオーカー山脈 160年前から住みついた モルモン教徒の土地だ 彼らは世界を逃れ この地で 神が下した神秘の言葉を 読み解こうとした 掘り出された金板に 刻まれていた言葉だ そして一夫多妻制を 実践している ブラフデールは米国最大級の 一夫多妻制宗派AUBの本拠だ 信者は9千人を超え 礼拝堂や 学校や運動場や資料館もある この30年で信者は2倍に 重婚数は3倍に増えた そこで教団は敷地を広げようと 土地を買い足そうとした ところがライバルがいた 口が重く何ごとも外に出さない よそ者が移って来た 教団と同じく彼らも暗号を読み解く 解読できるのは自分たちだけだ 教団本部から1キロ程の場所で 何千人もの建設労働者が 基礎工事に汗を流している 新参者の神殿と資料館のためだ あまりに巨大な施設なので 市の境界が拡張された 完成すれば連邦議事堂の 5倍の規模になるだろう 神殿には聖書や預言者や信者でなく サーバーやIT技術者や 武装した警備員がいる 彼らが耳を澄ますのは 天から降る神の言葉ではなく 世界中の通信網から吸い上げた 膨大な量の言葉や画像だ 小さなブラフデールの町に 二つの神殿が共存することになる AG: バンフォードさんの記事は 「NSAは巨大監視センターを建設」 英国滞在中にご出演いただいて ありがとうございます この「データセンター」について 詳しく教えてください 害のなさそうな名前ですが その能力は? JB: 敷地10万平米の広大な施設です これより大きなデータセンターは 米国に一カ所しかない 予算は20億ドルです ソルトレークシティ郊外の 軍事基地内に建設される ブラフデールは 施設に合わせて 町の境界を広げたほどです この施設の目的はひとつ 9.11事件の後に作り上げられた 巨大な盗聴プログラムの本拠です 冷戦終結後の10年 NSAは失敗続きでした 最初のWTC爆破を探知できず 東アフリカの米国大使館爆破も 米艦コール襲撃も見逃し 9.11テロも見逃した そこでNSAは再出発をはかり 巨大な盗聴機関に変身した 冷戦時代に見張っていたのは ソ連や東欧やキューバや中国など 共産主義国でしたが 現在は だれもが対象です 通信機器を使う者はみな監視する だってテロリストたちの通信手段は 他の人々と変わりませんから 私たちが使うのと同じ インターネットが監視されます この巨大な機関が毎日 膨大な量の情報を収集している 衛星や海底ケーブル盗聴や マイクロ波や携帯電話 個人PCやメールのリンクなど こうして集めた情報を 保管するのがユタの施設です センターの情報はクラウド方式で 米国各地のNSA職員が アクセスできます NSA本部からも地方拠点からも テキサスやハワイやジョージアなど どこにいても データセンターを利用できる これが監視センターの役割です NS: バンフォードさん たいていの人は CIAやFBIの活動は知っていても NSAのことは よく知りません 他の情報機関との違いや NSAの特徴を説明してください JB: はい NSAはCIAと大きく違います サイズは3倍ほど大きく 予算も多いし ずっと秘密主義です 活動内容も大きく違う NSAの専門分野は盗聴です 主要な通信網を傍受して 世界中の人々の会話を盗聴する ある程度は米国内でも 電話やメールの通信を見る これが今日の情報活動の花形です CIAの諜報活動は人間が対象です スパイを雇ったり 暗殺したり でも歴史をみれば 人的諜報活動は成績がよくない 米国が収集した情報の大半は NSAの傍受や盗聴によるものです これが両者の大きな違いです 今日のNSAは米国のみならず 世界的に強力な諜報機関です NS: 記事の中で紹介されている 監視センターの重要な機能に AES暗号に関わるものがあります どこが重要なのですか? JB: 巨大データセンターの目的は 保管の役割の他に NSAによる暗号解読への 貢献もあります NSAの使命には通信傍受と並んで 暗号の解読があります 情報の多くは 暗号化されていますから 第3の使命は 米国政府の通信の暗号化です ユタのセンターは暗号解読に 大きく貢献するでしょう 暗号解読には 2つの要素が不可欠です 一つは膨大な素材を保管する場所だ コンピューターで素材を解析して パターンを探すという作業では 電話やメールなどの資料が 増えれば増えるほど 解読データが増えて パターンが見つけやすくなる もう一つは超高速の計算機です 膨大な情報の山を即座に分析して パターンを見つけるためです そこでNSAはテネシー州にも 特殊施設を建設中です オークリッジは第二次大戦中に 極秘で原子爆弾を開発した場所です 今では原爆の代わりに 世界一の高速コンピューターを NSAが開発するのです 普通の人には 想像もできない速さです それが求められる理由は 「力仕事」だからです どんなデータでも最高速で処理して パターンを見分けなければならない NS: 元司法省のマシュー・ミラー氏は NSA内部告発者ドレイク氏への 訴追を批判し始めました ドレイク氏はNSAの 放漫管理をリークして スパイ罪で起訴され 後に取下げられました ミラー氏は最近のインタビューで ドレイク氏の告発は 正しかったと述べました 「本当に無駄を正そうとしていた」 「結果をふり返れば 検察の勇み足だった」 以前は訴追支持の立場でした NYタイムズ紙に引用されています 「機密情報を知る立場にある人は 機密保持の誓約を守るのが原則だ」 「訴追は審査の結果でしかない」 ミラー氏は今月に入ってからも オバマ政権によるかつてない 内部告発者攻撃を弁護する論説を 新聞に発表していました 「機密情報のリークは米国の 兵士や情報局員を危険にさらし」 「国家安全保障計画を 敵方に知らせる」 「内部告発があばくのは法律違反や 権力乱用や国民の安全への脅威だ」 AG: 元司法省の主任広報官 ミラー氏の発言です ここでトーマス・ドレイク氏 本人をお迎えします 討論会のためNYに来ています 2011年ライデンアワー賞を受賞し サムアダムズ賞も共同受賞しました ロンドンのバンフォード記者は ドレイク氏の弁護団の証人です ジェスリン・ラダック氏は ドレイク氏の弁護士です ご自身も内部告発者です 現在は米国の主要な 内部告発団体の職員です 著書は『裏切り者 内部告発者と米国のタリバン』 みなさん ようこそ ドレイクさん 何が起きたのです? 何の罪で起訴されましたか? いまは? トーマス・ドレイク(TD):自由の身です 2010年スパイ罪で起訴されました 5項目の容疑です 国防関連情報の保持とか─ リークじゃなくて「保持」です 部外者に渡す目的で 所持していたと言うのです 司法妨害や FBIへの偽証も問われた AG:どんな情報を「保持」していて 内部告発者と呼ばれのですか 何を知らせようとしたのですか NSAにどんな問題が? NSAで働いて何年ですか? TD: 7年近くです ヘイドン将軍の肝いりの計画に 外部から採用された 利権の圧力がすさまじく 採用も昇進も身内からで NSAは孤島でした 新しい血を入れる必要があり 半年で10人ほどが 外部から採用された 2001年の9.11以前のことです AG: そこで見たのは? TD: 初出勤が9月11日でね じきにパンドラの箱が開き 政府の不正や違反が ゾロゾロ出てきた 不正を生む双子の妖怪がいて トレイルブレイザーという計画は 数十億ドルの予算がつき 浪費と不正の温床だった ほとんどの要件は 既存の計画で十分だったのに AG: トレイルブレイザーとは? TD: 目玉となる大プロジェクトでした 「米国製を調達しよう」 「優良な人材を 民間から引き抜くより」 「デジタル対応は 請負業者に任せよう」 デジタル化は NSAに大きな試練でした データの洪水に対応できず 情況の把握もできない そこでNSAは 眼も耳もふさいでしまった NS: もう一方はシンスレッド計画ですね トレイルブレイザーとの関係は? NSAが後者を選んだ理由は? TD:お金ですよ NSAには軍産複合体の 利権がつきまとう 40億ドルの予算がつくのです シンスレッドの実態は 先端技術開発チームでした 少人数の専門集団が1990年代に 「デジタル時代への対応」をめざした データの洪水に対応し 集めたデータを損なわずに 有意な情報を抽出する方法を考える NSAには野心的な計画でしたが 肝のところは達成しました 予算はわずか数百万ドルです 9.11前に実用化の用意ができていた でもNSAは却下したのです 私が発見した重大な点は 不正や浪費の横行だけではなく 1978年以来の法体制を NSAが無視したことです FISA(外国諜報活動監視法)と 付随の特別法廷です NSAに入る前の冷戦末期に 軍でも働いたが 決して破らない掟があった NSAの修正憲法第1条は 「令状なしに国民を監視しない」 AG: でも実際には? TD: 恐ろしいことにNSAはすでに この掟を捨て去っていた 9.11は口実でした 緊急事態を盾に好き放題ができた パンドラの箱を開けてしまい 国内も外国も一律に 電子監視の網をかけた NS: 今では米国の情報機関が令状なしに 国民を盗聴しても合法なのですね TD: 一連の立法のおかげです その不当性はラダックさんが詳しい でも令状なしの盗聴の事実を 2005年にNYタイムズがあばくと 司法省は大がかりな捜査に乗り出し 私も網にかかりました なにしろ この計画は 極秘で進められていたのです バンフォード記者が『ワイアード』 4月号で詳しく語っています この計画は修正憲法第4条の 米国市民の権利を侵害しますが 問題にもされない NSAが海外の情報を集めるために 一定の活動をするのは合法ですが その能力が今や自国民に向けられ 誰もが個人情報を収集される AG:ドレイクさんが上司に訴えたとき どういう反応が? TD:モーリーン・バギンスキーに 相談しました NSAナンバー3だった人物です シンスレッドで十分という 私の提案は一蹴されました それでも私は食い下がった 「トレイルブレイザーは違法だ」 それなら法務顧問室に 相談しろと言われた 法務顧問室ではポテンザという 弁護士が私に説明した 大統領府がすべて了承している NSAは行政機関だから全て合法だ それを聞いて もう加担できないと思った 憲法を踏みにじる行為ですから AG: どんな行動を? TD: NSA内部や 9.11議会調査会に告発し 国防総省の監察にも通報した 私は匿名のNSA幹部として 他の職員と共に内部告発したのです AG: その結果? TD: トレイルブレイザーに関する 正式な監査が始まりました AG: あなたへの捜査も始まった 捜査のきっかけは TD: 司法省の国策捜査です NYタイムズの記事の 情報源を突き止めようとした 私は捕まったが NYタイムズの情報源というのは 見立て違いです 私はボルチモア・サン紙に接触し 機密でない情報を提供したのです 合法的な代案があるのに 秘密の新計画を大統領府が承認し 裏にはチェイニー副大統領や ジョン・ユー氏がいることなど 結局トレイルブレイザーだけでなく NSAの不正や浪費の話もした 記者も有能だったのです 合法的な代案のほうは 優れた情報収集能力と同時に 憲法違反の人権侵害もなく FISAも遵守していると訴えた AG: ジェスリン・ラダックさんは ドレイクさんの弁護士です ご自身も司法省の内部告発者です ドレイク氏の裁判と 最終的な罪状についてお話ください ジェスリン・ラダック(JR): 10件の重罪容疑はみな取り下げ 代わりに1件の微罪を認めました 政府のコンピューターの乱用という 職場でネットやり過ぎ みたいな罪です 米国のスパイ罪適用は 彼が4人目です 1人目はダニエル・エルズバーグ 現在6人が起訴されています どの容疑者もスパイではなく 内部告発者です 米国政府の拷問や盗聴という 近年最大のスキャンダルを あばいた人々です NS: オバマ政権が内部告発者に かつてない迫害を加えているのは? JR: ジャーナリストを訴追して 前例を作り 「機密保護法」の導入に つなげたいのです 米国ではずっと 回避されてきた法律です 内部告発に便乗して進めている 政府職員に対しては内部の不正や ムダや権限乱用を口外するなという 警告になっています AG: 放送はここまでです この続きはウェブでご覧ください ジャスリン・ラダックさんは 政府説明責任プロジェクトの主任で 新著は『裏切り者 内部告発者と米国のタリバン』 トーマス・ドレイクさんは NSAの内部告発者です ©Democracy Now Japan 2012 7